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キムかつ冒険活劇 第四話 風になびく赤いマフラー! 砂漠の秘宝とキムかつ隊

  グリズリー・ベアを打ち破り、異世界格闘大会の観客から喝采を浴びたキムかつは、勝利の興奮と困惑が入り混じった感情で、サイクロン号を抱きしめていた。肩のうーろんと腕のぷーあるも、先ほどの興奮が冷めやらない様子で、闘技場を見渡している。 その時、闘技場の司会者が再び高らかに声を上げた。 「異界の挑戦者、キムカツ! その力、まこと驚くべきもの! しかし、この大会はただの力比べではない! 次なる試練は、知と勇気を試す冒険となる!」 司会者の言葉に、観客たちは再び熱狂する。キムかつの足元の「鉄」のプレートが光り始め、中央部分がゆっくりと下降していった。 「な、なんだ!?」 闘技場の地下へと吸い込まれるように降りていくキムかつ。ぷーあるが不安げに「ニャー」と鳴き、うーろんもキムかつの腕に顔をうずめた。暗闇の中をしばらく下降すると、やがて光が見えてきた。 目を開けると、そこは広大な砂漠の真ん中だった。灼熱の太陽が容赦なく照りつけ、地平線の彼方まで砂漠が広がる。先ほどまでいた闘技場とは打って変わって、静かで、しかしどこか危険な雰囲気が漂っていた。 「砂漠…? 次の試練って一体…」 途方に暮れるキムかつの足元に、突然、古びた羊皮紙が舞い落ちてきた。拾い上げて見ると、そこには歪んだ文字でこう書かれていた。 「風の神殿に眠る秘宝を探せ。砂漠の試練を乗り越えし者のみ、次の扉を開く資格を得るだろう。――案内人は既に、お前の傍らにいる」 「風の神殿? 秘宝? 案内人?」 キムかつが困惑していると、背後から聞き覚えのある声がした。 「やっと来たか、異界の愚か者め」     振り返ると、そこに立っていたのは、先ほどまで闘技場にいたはずの審判ゴブリンだった。だが、彼の雰囲気は先ほどまでとは全く違う。震えていた声には自信が宿り、その目は鋭く光っていた。 「お、お前は…!」 ゴブリンはにやりと笑った。 「わしはこの砂漠の試練の案内人、名をゴブリン・ザ・ウィズダムという。お前は先の戦いでわしを楽しませた。故に、特別にこの試練の道案内をしてやろう」 「は、はあ…」 あまりにも急な展開についていけないキムかつだが、とりあえずこのゴブリンと行動を共にすることになった。 「では、早速出発だ! 風の神殿は、この砂漠の嵐の先に隠されている!」 ゴブリンはそう言うと、どこからともなく巨大な...

キムかつ冒険活劇 第三話 鉄拳8異世界トーナメント:一八 vs 伝説の獣人

    白い光の渦に飲み込まれたキムかつは、目を閉じたまま、まるで高速でエレベーターが上昇するような浮遊感に包まれていた。腕の中にしがみつく茶トラねこのぷーあると、肩に乗った茶白ねこのうーろんの温もりが、わずかな安心感をくれる。一体どこへ行くのか、どんな世界が待っているのか、想像もつかない。 やがて、その浮遊感は止まり、光が急速に薄れていく。恐る恐る目を開けると、そこは先ほどの巨大な歯車が回る異空間とは全く異なる、広大な円形闘技場の真ん中だった。周囲からは、ざわめきと熱狂的な歓声が響き渡る。 「な、なんだここ…!?」 キムかつの目の前には、土が敷かれた真新しい闘技場が広がっていた。周囲を何段もの観客席が取り囲み、色とりどりの衣装をまとった様々な種族の観客たちが、身を乗り出すようにしてこちらを見つめている。人間らしき者もいれば、獣の耳や尻尾を持つ者、あるいは鱗に覆われた者まで、まさに異世界感満載だ。上空には巨大な飛行船がいくつも浮かび、その船からも観客たちが下を覗き込んでいる。 そして、彼の足元には、なぜか巨大な「鉄」の文字が刻まれたプレートが埋め込まれていた。 「このプレートは…まさか…!?」 キムかつが呆然としていると、闘技場の中央に立つ、屈強な体格の司会者が高らかに叫んだ。 「さあ、皆の衆! 長らくお待たせいたしました! これより、我らが異世界格闘大会、最終戦が始まるぞおおお!」 「い、異世界格闘大会!?」     キムかつは思わず叫んだ。なぜ、この異世界で、自分が最も愛する格闘ゲームを彷彿とさせる大会が開かれているのか。混乱がピークに達する。 「対戦者はこの二人! まずは、我が地の誇る最強の戦士! 伝説の獣人、グリズリー・ベアッー!」 司会者の声と共に、闘技場の奥から咆哮が響き渡った。現れたのは、身長3メートルはあろうかという巨大なクマの獣人だった。全身を分厚い毛皮に覆われ、鋭い爪を持つ手が荒々しく振り回されるたびに、周囲の空気が震える。その眼光は鋭く、まるで獲物を狙うかのようにキムかつを射抜いていた。観客たちは狂喜乱舞し、地鳴りのような「ベアー!」コールが響き渡る。 「そして対するは…! 謎の光の中から現れた、異界の挑戦者! キムカツゥー!」 スポットライトがキムかつに当たる。観客たちの視線が一斉に彼に集中し、先ほどの熱...

キムかつ冒険活劇 第二話 時空を超えし猫たち:うーろんとぷーあるの秘密

   謎のローブの人物が放った黒い光線を紙一重でかわしたキムかつは、両腕でサイクロン号をしっかりと抱え込むように持ち、その瞳に闘志を宿していた。 肩に乗る茶白ねこのうーろんと、腕にしがみつく茶トラねこのぷーあるも、異様な空間と敵の存在に警戒を強めているようだ。 「俺は戦いたくはないが…お前たちが猫たちに危害を加えるなら、容赦はしない!」 キムかつは、自らの意思とは裏腹に体が勝手に動くような感覚に戸惑いつつも、目の前の敵と対峙する覚悟を決めた。長年培ってきた格闘ゲームの反射神経と、いかなる状況でも逆転を諦めないゲーマー魂が、彼の全身に漲っていた。 ローブの人物は、キムかつの変貌ぶりに一瞬ひるんだように見えたが、すぐに冷笑を浮かべた。 「面白い…ただの人間にしては、並々ならぬ気配を放つな。その妙な機械のせいか? しかし、この時の狭間で抵抗しても無駄だ。ここは過去と未来、あらゆる並行世界が混じり合う混沌の空間。お前のような存在は、すぐに時の塵となるだろう!」 そう言い放つと、ローブの人物は再び杖を構え、今度は無数の黒い影の塊を放ってきた。影の塊はまるで意志を持ったかのように、キムかつの動きを予測して襲いかかる。 「くそっ!」 キムかつはサイクロン号を両手でしっかりと押さえつけ、左手でレバーを、右手でボタンを高速で操作する。 彼の頭の中には、愛用する格闘ゲームキャラクターの技表が高速で再生されていた。その瞬間、彼の背後に異変が起きた。 まばゆい光が迸ると共に、まるで彼の意志が具現化したかのように、屈強な男の幻影が立ち現れた。 その幻影は、キムかつの愛用キャラクター「三島一八」の姿を模しており、冷徹な表情でローブの人物を見据えている。 「行くぞ! 風神拳!」 キムかつがサイクロン号のレバーを素早く入力し、特定のボタンを叩き込むと、彼の背後に現れた幻影の男が、その言葉に呼応するかのように稲妻を纏った拳を突き出した。その拳は、影の塊の群れを次々と粉砕していく。       しかし、影の塊はしつこい。一つを粉砕しても、次々と新たな影が押し寄せてくる。 「ニャー!」 その時、腕にしがみついていたぷーあるが、突如として身を乗り出し、影の塊の一つに向かって飛びかかった。茶トラの小さな体が、信じられないほどの速度で宙を舞う。そして、ぷーあるの...

キムかつ冒険活劇 第一話 奇跡の始まり! サイクロン号、いざ発進!

    西暦20XX年、梅雨明け間近の蒸し暑い日が続く午後、愛知県某所の築30年を超える木造アパートの一室は、熱気と微かな電子機器の匂いに満ちていた。キムかつは、Tシャツの背中にべっとりとかいた汗を感じながらも、作業台に広げた自作のゲームコントローラー「サイクロン号」に全神経を集中させていた。 「ふむ…ファンの回転も良し、七色のLEDも問題なし。完璧だ!」 精密ドライバーを置き、満足げに呟く。明日に控える「鉄拳8 超初心者向け講座」と銘打ったゲーム配信に向けて、彼の最高の相棒は万全の仕上がりを見せていた。キムかつは40代独身、実家暮らし、そして非正規雇用。世間一般から見れば、決して華々しいとは言えないプロフィールだ。しかし、彼には誰にも負けない情熱があった。それは、格闘ゲーム、特に「鉄拳8」への並々ならぬ愛、そして彼の心のオアシスである二匹の愛猫、茶白ねこの「うーろん」と茶トラねこの「ぷーある」への深い愛情だった。     部屋の隅、使い古された座椅子の上では、茶白ねこのうーろんが丸くなって気持ちよさそうに眠っている。その傍らでは、茶トラねこのぷーあるが、好奇心旺盛な瞳でサイクロン号の周りをちょこまかと動き回っていた。猫の毛が舞い散る部屋だが、キムかつにとっては最高の癒やし空間だ。 「お前たちも、明日の配信応援してくれるか? うーろん、ぷーある」 サイクロン号を両手に持ち上げ、猫たちに語りかける。ぷーあるは「ニャー」と短く返事をし、うーろんは寝たまま尻尾を小さく振った。その瞬間、部屋の蛍光灯が突如として激しくチカチカと点滅し始めた。まるで生命が宿ったかのように、光が乱舞する。 「ん? またか。大家さん、早く直してくれないかな…」 キムかつが呆れたように天井を見上げた、その矢先だった。蛍光灯から放たれた光は、それまでの点滅から一転、部屋全体を真っ白な、強烈な閃光で包み込んだ。網膜に焼き付くような光に、キムかつは思わず目を瞑る。次の瞬間、耳元で聞いたことのない、しかしどこか懐かしいような、深く重い機械音が響き渡った。 「ヴォオオオオ…ズン…ヴォオオオオ…」 それは、彼の自作コントローラー「サイクロン号」のファンが唸る音に似ていたが、はるかにスケールが大きく、周囲の空気を震わせるような響きがあった。恐る恐る目を開けると、そこは先ほどま...