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7月 21, 2025の投稿を表示しています

愛猫のおやつ代を稼ぐためにポイントサイトのアンケートに必死で答えた実家住まいの非正規雇用43歳独身男性キムかつ

    『ポイントサイトの悪魔と、キムかつの褪せたキャットフード』 蛍光灯の白い光が、壁の黄ばんだシミをいやらしく照らし出す。キムかつ、本名・木村勝男、43歳、独身、非正規雇用。人生のハイライトといえば、中学時代のマラソン大会で奇跡的に3位に入ったことくらいか。今は実家の子供部屋だった六畳間に寄生し、古びたパソコンと向き合う日々だ。彼の瞳は、画面の隅に表示されるポイント残高に釘付けになっている。目標額まで、あと、312ポイント。 「タマ…もうちょっとだからな…我慢しろよ…」 キムかつが声をかける先には、部屋の隅で香箱座りをする老猫、タマがいる。白地に茶色のブチが入った、どこにでもいるような雑種猫だが、キムかつにとっては唯一無二の家族であり、この薄暗い生活における一条の光、いや、唯一の温もりだった。そのタマが最近、お気に入りの高級おやつ「海の宝石箱・極上まぐろ味」に見向きもしなくなった。獣医に見せると、加齢による食欲不振だろうとのこと。だが、キムかつは諦めきれない。あの恍惚とした表情で「海の宝石箱」を頬張るタマの姿を取り戻したい。そのためには、より匂い立ち、より嗜好性の強い、しかし当然ながら高価な「プレミアム・キャットニップ風味・深海サーモンムース仕立て」を手に入れねばならないのだ。 その原資を得るべく、キムかつが血眼になって取り組んでいるのが、ポイントサイトのアンケート回答だ。「あなたの好きな色は?」「休日の過ごし方は?」「最近購入した家電は?」…ありきたりな質問に、彼は無心でクリックを繰り返す。1ポイント、また1ポイントと、雀の涙ほどの報酬が積み重なっていく。それはまるで、賽の河原で石を積むような、虚しくも切実な作業だった。 そんなある日、いつもの退屈なアンケートリストの中に、異質なものが紛れ込んでいることに気づいた。 【特別調査】あなたの潜在的な”願望”に関するアンケート(高ポイント進呈!) 怪訝に思いつつも、”高ポイント”の文字に釣られてクリックする。現れた質問は、これまでのものとは明らかに毛色が違った。 問1:もし、あなたの愛する存在を不老不死にできるとしたら、何を代償にしますか?(複数選択可:a. 自身の寿命の半分 b. 全財産 c. 最も美しい思い出 d. 他者の不幸 e. その他) 問2:世界から”退屈”という概念を消し去るボタンがあ...