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8月 4, 2025の投稿を表示しています

弟夫婦のラブラブなSNS投稿を見て無心でポテトチップス(のり塩)を食べ続けた実家住まいの非正規雇用43歳独身男性キムかつ

      『海苔塩の侵略』 蛍光灯がチカチカと瞬く深夜、キムかつ(43歳・独身・非正規雇用・実家暮らし)は、万年床と化した布団の上でスマートフォンの画面を凝視していた。画面には、満面の笑みを浮かべた弟夫婦の写真が映し出されている。キラキラした加工が施され、「#結婚記念日 #愛してる #最高のパートナー」といった、キムかつの神経を逆撫でするハッシュタグが並んでいた。弟は一部上場企業に勤め、昨年都内にマンションを購入した。片やキムかつは、実家の子供部屋から出られず、派遣の軽作業で日銭を稼ぐ日々。その格差が、スマートフォンの明るい画面との対比で、より一層、暗く重くキムかつの心にのしかかる。 「…………別に、羨ましくなんかないし」 誰に言うでもなく呟き、キムかつは脇に置いてあった大袋のポテトチップス(のり塩)に手を伸ばした。パリッ。乾いた音が部屋に響く。塩気と青のりの風味が口の中に広がるが、味はよく分からない。ただ無心で、機械的に、彼はチップスを口に運び続けた。SNSのフィードをスクロールする指と、チップスを掴む指が、まるで別の生き物のように動き続ける。弟夫婦の次の投稿は、おしゃれなレストランでのディナーの写真だった。キャンドルの灯りが二人の幸せそうな顔を照らしている。 パリ、パリ、サク、サク……。 キムかつは食べるのをやめられない。袋はあっという間に空になり、彼は躊躇なく戸棚から新しい袋を取り出した。今夜3袋目だ。胃がもたれる感覚も、塩分過多への懸念も、今の彼にはどうでもよかった。ただ、この画面の中の「幸福」から目を逸らすための、防衛本能のようなものだったのかもしれない。 その時、奇妙なことに気づいた。指先に付着した青のりの粒子が、やけに鮮やかな緑色をしている。そして、払っても払っても、なぜか指から離れないのだ。まるで、皮膚に根を張ろうとしているかのように。 「…なんだこれ」 気味悪く思いながらも、食べる手は止まらない。SNSには弟夫婦の飼い犬(トイプードル)が、二人にじゃれついている動画がアップされた。「家族が増えました(笑)」というコメント付き。キムかつの心臓が、嫌な音を立てて軋む。 パリッ!     ひときわ大きな音を立ててチップスを噛み砕いた瞬間、異変は加速した。指先だけでなく、手の甲、腕、さらには布団や床に散らば...