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7月 17, 2025の投稿を表示しています

キムかつ冒険活劇 第一話 奇跡の始まり! サイクロン号、いざ発進!

    西暦20XX年、梅雨明け間近の蒸し暑い日が続く午後、愛知県某所の築30年を超える木造アパートの一室は、熱気と微かな電子機器の匂いに満ちていた。キムかつは、Tシャツの背中にべっとりとかいた汗を感じながらも、作業台に広げた自作のゲームコントローラー「サイクロン号」に全神経を集中させていた。 「ふむ…ファンの回転も良し、七色のLEDも問題なし。完璧だ!」 精密ドライバーを置き、満足げに呟く。明日に控える「鉄拳8 超初心者向け講座」と銘打ったゲーム配信に向けて、彼の最高の相棒は万全の仕上がりを見せていた。キムかつは40代独身、実家暮らし、そして非正規雇用。世間一般から見れば、決して華々しいとは言えないプロフィールだ。しかし、彼には誰にも負けない情熱があった。それは、格闘ゲーム、特に「鉄拳8」への並々ならぬ愛、そして彼の心のオアシスである二匹の愛猫、茶白ねこの「うーろん」と茶トラねこの「ぷーある」への深い愛情だった。     部屋の隅、使い古された座椅子の上では、茶白ねこのうーろんが丸くなって気持ちよさそうに眠っている。その傍らでは、茶トラねこのぷーあるが、好奇心旺盛な瞳でサイクロン号の周りをちょこまかと動き回っていた。猫の毛が舞い散る部屋だが、キムかつにとっては最高の癒やし空間だ。 「お前たちも、明日の配信応援してくれるか? うーろん、ぷーある」 サイクロン号を両手に持ち上げ、猫たちに語りかける。ぷーあるは「ニャー」と短く返事をし、うーろんは寝たまま尻尾を小さく振った。その瞬間、部屋の蛍光灯が突如として激しくチカチカと点滅し始めた。まるで生命が宿ったかのように、光が乱舞する。 「ん? またか。大家さん、早く直してくれないかな…」 キムかつが呆れたように天井を見上げた、その矢先だった。蛍光灯から放たれた光は、それまでの点滅から一転、部屋全体を真っ白な、強烈な閃光で包み込んだ。網膜に焼き付くような光に、キムかつは思わず目を瞑る。次の瞬間、耳元で聞いたことのない、しかしどこか懐かしいような、深く重い機械音が響き渡った。 「ヴォオオオオ…ズン…ヴォオオオオ…」 それは、彼の自作コントローラー「サイクロン号」のファンが唸る音に似ていたが、はるかにスケールが大きく、周囲の空気を震わせるような響きがあった。恐る恐る目を開けると、そこは先ほどま...