スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

8月 13, 2025の投稿を表示しています

愛猫が自分の腹の上で寝るのを「信頼の証だ…!」と勝手に感動している実家住まいの非正規雇用43歳独身男性キムかつ

    薄暗い四畳半、万年床の上で、キムかつは至福の重みを感じていた。愛猫のタマが、ふかふかの、しかし若干加齢臭が漂い始めたキムかつの腹の上で、満足げに喉を鳴らしている。「タマ…お前だけだよ、俺をこんなにも信頼してくれるのは…」。キムかつの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。齢43、実家暮らしの非正規雇用。社会の歯車というよりは、歯車の溝に挟まったホコリのような存在。それがキムかつであった。 その夜、キムかつの腹の上で眠るタマが、不意に淡い七色の光を放った。キムかつは寝ぼけ眼でそれを見て、「おお、タマよ、お前はついに悟りを開いたのか…それとも、俺の腹の脂がプリズム効果を…?」などと見当違いな感動を覚えていた。 翌朝、キムかつが惰眠を貪っていると、階下から母親の甲高い声が響いた。「カツオ!あんた、今日は仕事休みだって!なんか、社長がUFOにさらわれたとかで、会社がてんやわんやらしいわよ!」。キムかつは飛び起きた。UFO?社長が?まさか…。しかし、テレビをつけると、ワイドショーはその話題で持ちきりだった。「昨日未明、〇〇市の株式会社△△の社長宅に謎の飛行物体が飛来し、社長夫妻を連れ去った模様です。現場には奇妙な粘液と、なぜか大量の猫じゃらしが残されており…」。 「…タマ?」 キムかつは恐る恐る、傍らで毛づくろいをするタマに視線を送った。タマは「にゃあ」と一つ鳴き、キムかつの鼻先に肉球を押し付けた。その瞬間、キムかつの脳内に、直接的なイメージが流れ込んできた。『退屈だった。ちょっと宇宙にドライブに行きたくなった。ついでに社長も誘ってみた。土産は猫じゃらしでいいかと思った』。 キムかつは戦慄した。うちの猫、とんでもない能力を秘めているのでは? それからの日々は、キムかつにとってまさに夢のようだった。最初は半信半疑だったが、「明日の昼飯、極上のうな重になあれ」とタマに願えば、翌日、出前持ちが「ご注文の特上うな重です。代金は…あれ?お支払い済みになってますね。どなたかからのプレゼントでしょうか?」と首を傾げながら届けに来る。「あのコンビニの新人バイトの女の子と、ちょっとイイ感じになりたいな」と願えば、翌日、その子がレジで「あの…いつもありがとうございます。これ、よかったら…」と、期限切れ間近のアンパンを頬を染めながら差し出してくる。    ...