スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

8月 5, 2025の投稿を表示しています

モリアの奇跡と勘違いの匠

  へえ、毎度馬鹿馬鹿しいお噺で、お付き合いをいただきまして、ありがとうございます。 えー、こちとら現代、電気で明かりはつくわ、車は走るわ、まことに便利な世の中でございますが、ちょいと昔に目を向けますとね、世の中は剣だの魔法だのってえ物騒なもんで満ちていたそうで。 中つ国、なんてえ場所がございまして、ここでは一つの指輪をめぐって、そりゃあもう大騒ぎ。エルフだのドワーフだの、背の低いホビットだの、いろんな連中が寄ってたかって、一つの指輪を火山の火口に捨てに行こう、なんてえ壮大な旅の真っ最中でございます。 さて、そのご一行様が、モリアっていうドワーフの古い巣、薄暗ーい洞窟の中を、そろりそろりと進んでおりやした。先頭はガンダルフっていう偉い魔法使いのおじいさん。杖の先っぽが、ぽーっと心もとなく光ってる。暗いの、寒いの、じめじめするの、おまけに後ろからオークなんて化け物が追ってくるかもしれねえ。いやはや、たまりません。 一行が、ガラクタが山と積まれた工房跡で、ちいとばかし休んでた、その時でございます。 ガタガタガタッ! 部屋の隅のガラクタの山が、突然揺れだした。と思いきや、 ピカピカピカッ!チカチカチカッ! 赤だの青だの緑だの、七色の光が目まぐるしく点滅する。 「なんだなんだ!?」「敵か!?」 弓やら斧やらを構えて、みんな殺気立っております。 と、そのガラクタの山がガラガラと崩れましてね、中から転がり出てきたのが、一人の男。 これがまあ、なんとも妙ちきりんな格好で。歳は四十がらみ、腹はでっぷり、髪はオールバック。首には場違いな真っ赤なマフラーを巻きつけて、目には茶色のサングラス。どう見てもこれから冒険てえ顔じゃねえ。どっちかっていうと、近所のコンビニにでも行くような風体でございます。 このお人、名をキムかつと申します。腕にはなにやら四角い板を、大事そうに抱えてる。足元にゃあ、茶白と茶トラの子猫が二匹、ふるふると震えておりやす。 「な、なんだここは!? 俺は部屋でハンダごて握ってたはずじゃ…」 さあ、わけがわからねえのはご一行様も同じこと。 「何やつ!サウロンの手先か!」 なんてアラゴルンさんが凄みますと、 「さうろん? 誰ですかい、そりゃ。俺はキムかつ! ここはどっかの撮影スタジオですかい? ずいぶん凝ってますなあ」 と、こうなりますと、話がまるで噛み合わねえ。 さ...